保育士の雇用形態の一つである、臨時職員という働き方をご存じでしょうか。最近では経験を積むため正職員になる前に目指す方や、育休の復帰後の働き方として選ぶ方もいるようです。今回は、臨時職員として働く保育士さんの仕事内容、給料や待遇、メリット・デメリットを紹介します。また、臨時職員になるための方法についてもまとめました。
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■目次
保育士の臨時職員ってどんな働き方?
まず、臨時職員とは何か、どんな勤務形態で働く職員のことを指すのか見ていきましょう。
臨時保育士とも呼ばれる「臨時職員」とは
保育士の臨時職員とは、
- 産休・育休に入る保育士さんの代わり
- 障がい児のケアのための加配
などの理由で必要とされ、募集される職員のことを言います。
正職員の中途採用が少ない公立保育園では、臨時職員の採用が多く行われており、通年で募集している自治体が多いようです。
一方、私立保育園では、契約社員や保育補助スタッフなどの非正規職員として募集されています。
臨時職員の勤務期間や勤務時間
臨時職員は基本的に短期間での勤務になります。
例えば、産休・育休中の保育士さんが復帰するまでの間や、年度末までの3カ月間、入職してから1年間のみなど、勤める期間は園によってさまざまです。
勤務時間は、フルタイムでの勤務をする方もいれば、育児中で決まった曜日・時間での勤務をする方もおり、保育士さんの足りていない時間での早番や遅番での勤務をする方もいます。
正職員は決まってフルタイムの長期の雇用であることを考えると、臨時職員のほうが柔軟な働き方ができるのかもしれません。
保育士の臨時職員の仕事内容や役割
臨時職員の主な仕事は
- クラス担任業務
- 月案・週案の作成
- 行事・壁面装飾の製作
- 事務作業
- 保護者対応
など一般的な保育士さんの仕事内容をイメージするとわかりやすいでしょう。
臨時職員はサポートをする役割というイメージが強いものの、仕事内容は正職員とほとんど変わらない園が多いようです。
保育士の臨時職員の給料や待遇事情
給料・ボーナス
臨時職員には、月給制、時給制、日給制の3つの給与形態があるようです。
形態別に、平均の給料をみていきましょう。
月給制の求人では、正職員と同じように週5日の出勤が求められるケースが多いようです。
一方、ボーナスが出るという求人もあるため、その点はメリットかもしれません。
時給制や日給制などではボーナスがないなど給与が低い場合が多いですが、希望のシフトで柔軟な働き方ができるのはメリットと言えるでしょう。
希望の働き方に合わせて給料が支払われる求人探しができるとよいですね。
待遇・福利厚生
福利厚生の一つである、産休や育休などの制度は、臨時職員として働く保育士さんも活用できるのでしょうか。
総務省「臨時・非常勤職員の休暇等について」によると、臨時職員も産休や育休を取得することができますが、その期間は無給となるようです。
自治体によっては、子どもが1歳6か月になるまでの間に臨時職員の任用期間が終了しないことが明確であれば、育児休暇を取得できるといった制度を導入しているところもあります。
臨時職員を目指すときは、自治体や法人の雇用期間の条件や制度をしっかりと確認しておくと、産休や育休を安心して取得することができるでしょう。
副業はできる?
自治体や法人によっては給与が低いところもある臨時職員ですが、副業はできるのでしょうか。
公立保育園の場合
公立保育園で臨時職員として働く場合、地方公務員として就業するため、原則副業はできないと考えられます。
他の仕事をしている方は、副業として臨時職員をすることもできないので、注意が必要です。
私立保育園の場合
私立保育園で臨時職員として働く場合は、園が禁止をしない限りは副業を可とするケースもあるようです。
臨時職員としての働き方は、保育士の仕事をメインにすることも、他の仕事の合間に臨時職員の保育士として働くこともできそうです。
シフト時間や勤務地に合わせて、柔軟な働き方をすることも可能と言えるでしょう。
保育士の臨時職員として働くメリット・デメリット
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メリット
すぐに働ける
正職員の募集は年度が変わるタイミングで増える一方、臨時職員の募集は急募求人が多い傾向にあり、時期を問わずに仕事に就くことができます。
急募求人に応募して採用されれば、ブランク期間が伸びることもなく、生活にも影響が出ることなく働けそうですね。
時間の融通が利きやすい
臨時職員のなかでも特にパートタイムの勤務では、自分のスケジュールに合わせて勤務時間を調整しやすいというメリットがあります。
そのため、育児中で時間の制約がある方などは働きやすいと言えるでしょう。
また園によって臨時職員は残業なしや少ない場合もあるので、その点においても時間の融通が利きやすいと言えるかもしれません。
経験を積める
臨時職員としての業務も、保育の実務経験として転職時のアピール材料になります。
今後正職員になりたいと考えている方は、一度臨時職員として働く期間を設け、その中で経験を積むのもよいでしょう。
また、臨時職員は短期間での仕事が多いので、複数の園で勤務することもできます。
多くの園を経験し、多様な保育観を勉強したい方にも向いている働き方と言えそうです。
デメリット
給料が安い
臨時職員は、正職員の保育士さんと比較すると給与は安い傾向にあるでしょう。
特にフルタイムで勤務している臨時職員は、仕事内容は正職員とさほど変わりないにも関わらず、給料が低いうえ、ボーナスもないことが多いため、そこに不満を感じる方も多いかもしれません。
やりがいと働き方を吟味し、自分が納得できる職場を探す必要がありそうです。
正社員に登用されるかわからない
公立保育園で長く働いても、臨時職員からそのまま正職員に昇格することはありません。
公立保育園で正職員になるには、公務員採用試験に合格する必要があるため、なかなか正職員登用の制度化が難しいという背景もあります。
ただ私立保育園であれば、臨時職員の契約期間満了後に正社員に昇格できる園も少なくありません。
いずれは正職員で働きたいという方は、私立保育園で臨時職員として働くことを視野に入れるとよいかもしれませんね。
契約の更新がある
臨時職員には契約期間が設けられており、1年ごとなど短い期間で働く場所が変わる可能性もあるようです。
そのため、異動先で一から人間関係を構築したり仕事を覚えたりすることにストレスを感じる方もいるかもしれません。
その一方、もし職場環境がよくないという場合でも、契約期間内での関わりですむため、人間関係で悩みやすい方にとってはメリットと感じる方もいるかもしれません。
保育士の臨時職員になるには?
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自治体の募集要項をチェックして登録する
公立園における保育士の臨時職員の採用は、自治体の臨時職員の名簿に登録し、欠員の出た保育園の面接を受けるという流れのようです。
そのため随時自治体のホームページや掲示板などで、求人募集をチェックしておきましょう。
実際に募集されている園の求人を見ることができる自治体もあるため、あわせて確認しておくとよいですね。
求人媒体を利用して応募する
ハローワークや転職サイトを経由して応募するという方法もあります。
複数の求人から希望する条件に合ったものを探すことができるので、自分では見つけられなかった求人を見つけられるかもしれません。
公立園だけでなく、社会福祉法人や企業が運営している私立園も含め、幅広い求人に応募することができるようです。
保育士の臨時職員を目指す方向けの履歴書・面接対策
臨時職員の保育士として働くうえで、どんなポイントをおさえて履歴書や面接の準備をするとよいのでしょうか。
履歴書の書き方
保育士の臨時職員の選考では、履歴書を通して、自身の保育士経験や学んできたスキルを伝えられるとよいでしょう。
例えば、子どもとの関わりで気をつけていることや、これまで担任してきたクラスについて書くとよさそうです。
他にも、書き文字や文章構成の丁寧さなどをアピ―ルできれば、書類作成も安心して任せられる人だと感じてもらえるかもしれません。
なかには、異動が多い職場に務めていたことから職歴欄の書き方に悩む方も多いかもしれません。
その際は、以下のように同一の自治体や法人内で異動していたということがわかるような記述をするとよいでしょう。
- 2015年4月 ○○市 ○○保育園に臨時職員として採用
- 2015年4月 ○○市 ○○保育園に配属
- 2016年4月 ○○市 ○○保育園に異動
- 2018年4月 ○○市 ○○保育園に異動
- 2020年3月 ○○市 ○○保育園 一身上の都合により退職
面接での答え方
臨時職員の採用面接では、
- 募集されているシフトに沿って出勤できるか
- 契約期間の満了まで働くことができるか
- どんなスキルを持っているか
などをアピールできるとよいでしょう。
答え方の例文を紹介します。
<例文1:志望動機>
育休を機に保育士を退職し、育児に専念していましたが、再び保育士の仕事に携わりたいという思いから貴園の臨時職員を志望いたしました。
育児の都合上限られた時間での勤務となりますが、自身の育児経験から子どもや保護者に寄り添った温かい保育をしたいと考えています。
担当制保育を導入している貴園で、子どもにも保護者にも安心感を持ってもらえる保育士になれるよう精進してまいります。
<例文2:特技・スキル>
ペープサートやパネルシアターなどを演じることが得意です。
絵本や昔話をもとに、自分で製作したものが現在○本あり、子どもの興味や季節に合わせて表現できるように準備しています。
貴園でも子どもたちに楽しんでもらうことができればと考えています。
<例文3:長所・短所>
私の長所は、注意深いところです。
注意深く観察することで、子どもの小さな変化に気づいたり、けがの防止をしたりと保育に役立てていきたいと考えています。
一方、慎重になりすぎるという短所につながることもあります。
子どもがのびのびと成長できるよう、周囲と相談しながら柔軟に対応していくことを心がけてまいります。
保育士の「臨時職員」という働き方を知り、転職の視野にいれよう
今回は、保育士の臨時職員の仕事内容、給料や待遇、メリット・デメリットを紹介しました。
臨時職員は、正職員の保育士さんとほぼ同じ仕事内容である一方、柔軟な勤務時間に対応できる働き方です。
その分給料が少ない、ボーナスが出ないなどメリット・デメリット両方の側面がありますが、活かし方によっては自分の理想とする働き方を叶えられるかもしれません。
臨時職員になるには、自治体の登録ののち、面接を受ける形が一般的です。
履歴書の書き方や面接対策の例文を参考にすると安心かもしれません。
転職活動の合間や産休・育休復帰後の仕事に、保育士の臨時職員という働き方を検討してみてくださいね。