現在、子育て家庭のニーズの増加や多様化により、幼稚園と保育園が一体となった認定こども園が増加しています。そこで主に働いているのは「保育教諭」と呼ばれる人たち。
保育教諭の最大の魅力は、幼稚園教諭免許と保育士の資格を両方もっている、保育のプロだということです。今回は、認定こども園で働く保育教諭の給料や仕事内容、幼稚園教諭の免許更新についてなどを紹介します。
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■目次
保育教諭とは?
保育教諭とは認定こども園の先生を指す
保育教諭というのは、保育士と幼稚園教諭2つの資格を持つ、認定こども園の先生のことを指します。
認定こども園には、施設の成り立ちに
応じて、
1、幼保連携型
2、幼稚園型
3、保育所型
4、地域裁量型
の4つのタイプが存在します。この中で最も数が多いのが、1の幼保連携型こども園です。 内閣府の2018年調査によると、認定こども園の全体数は6,160園。そのうちの約7割が、この幼保連携型です。
幼保連携型の認定こども園で働くためには、原則として幼稚園教諭と保育士両方の資格を有する必要があります。
そのほか3つのこども園でも、預かる子どもの年齢に応じて保育士か幼稚園教諭どちらかの資格を持っていれば働くことは可能ですが、できれば保育教諭が担当することが推奨されています。
幼稚園の子どもたちはだいたい14〜15時頃に降園してしまうので、幼稚園教諭の勤務時間は比較的短いイメージがあります。しかし最近は共働きの世帯が増え、幼稚園でも保育園並みに長時間の預かり保育を行うところが増えてきました。
そうした園でも、認定こども園への移行を考慮して、保育教諭を積極的に採用している傾向にあるようです。
保育教諭と保育士、幼稚園教諭の違いとは?
保育士は0歳児からの子どもたちを保育します。幼稚園教諭は3歳児からの子どもたちと教育を交えながら成長の手助けを行います。この2つの要素を取り入れた位置づけが、保育教諭と言えるでしょう。
保育教諭は認定によって担当する子どもたちの領域が異なります。保育園の領域の子どもたちが担当の場合は保育士に似た働き方、幼稚園の領域の子どもたちが担当であれば幼稚園教諭に似た働き方になります。
保育士資格と幼稚園教諭免許取得の特例制度
文科省の調べによると、現役で働く保育士・幼稚園教諭の約7〜8割の方が2つの資格を併有しています。しかし、残りの2〜3割の方は片方の資格しか取得していません。
そんな方々に向け、2015年〜2019年の間は簡易的な方法でもう一つの資格が取れる特別措置が実施されることになっていましたが、令和6年度末までの延期が決定しました。
対象者
幼稚園、保育所、認定こども園などの子育て支援施設において「3年以上かつ4,320時間以上」の実務経験を有する者
取得方法
いずれの資格を取る場合も、大学や専門学校などの指定された講座を受講して8単位を取得します。学校によってはインターネットのオンライン講座などでも取得可能なので、働きながらでも受講することができますよ。
応募者の状況を見てこの特例措置は延期される可能性がありますが、まだ見通しは不明なので、希望する方はなるべく早めに申し込みましょう。
出典:幼稚園免許状を有する者における保育士資格取得特例/厚生労働省
出典:幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例/文部科学省
保育教諭の給料や仕事内容
給料
認定こども園で働く常勤の保育教諭の給料は、私立の場合24.20万円、公立の場合は25.11万円でした。保育士は私立の場合は26.21万円、公立だと27.97万円です。幼稚園教諭では、私立で25.90万円、37.49万円というデータになっています。
一見、保育教諭の給与は保育士や幼稚園教諭と比べて低く感じますが、内閣府が公表している『幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査』を見ると、昇進するにつれて昇給する伸び率は保育教諭が一番高いことがわかります。
施設によってばらつきもありますが、今後は保育業界でキャリアを積みたいという場合は、保育教諭として働くという選択肢を視野にいれてもいいかもしれませんね。
勤務時間
認定こども園の子どもたちは、それぞれの年齢や保護者の状況に合わせて1〜3号と利用認定がなされており、預かり時間がバラバラです。利用認定には
・1号認定…保育を必要としない3〜5歳児
・2号認定…保育を必要とする3〜5歳児
・3号認定…保育を必要とする0〜2歳児
という違いがあり、1号認定の子どもたちは幼稚園同様に、14〜15時頃に降園することが多いため、子どもの預かり時間を間違えないよう配慮は必要です。保育教諭の勤務時間は一日8〜9時間のシフト制になっていること多いです。
仕事内容
こちらは子どもたちの年齢構成や、園の指導方針によってさまざまです。1〜3号のどの認定の子どもを受け持つかによって、やることは変わってきます。3号認定の子どもは「保育を必要とする乳児」なので、このクラスを受け持つ場合は、通常の保育所勤務と似たような仕事内容になるでしょう。
幼児を中心とした1〜2号認定の子どもたちをまとめて受け持つ場合には、メインの活動を14時くらいまでに設定しておき、どの子どもたちも平等にクラス活動ができるようにしておくなどの工夫が必要な場合もあります。
保育教諭における幼稚園教諭の免許更新
免許更新の対象者
平成21年4月1日から教員免許更新制が実施され、教員免許には有効期限が定められました。教員免許更新制が実施されたことにより、幼稚園免許取得から10年で満了を迎え、失効日から2年2カ月前から2カ月前の2年間で免許状更新講習を30時間以上受講する必要があります。
令和2年3月31日までは経過措置として保育士資格または幼稚園教諭いずれかを所持していれば経過措置期間で保育教諭として働けました。しかし、それ以降は両方の資格を所持していなければ保育教諭としては働くことはできなくなります。
(文部科学省の資料の3ページに記載)
免許更新はどこで行う?
幼稚園教諭免許の講習は、各地の大学などで開講されています。まずは、講習を開講している大学などに申請をして手続きを進めましょう。
(文部科学省の資料の11ページに記載)
保育教諭として働くメリット・デメリット
保育教諭として認定こども園で働く場合、どんなメリットがあるでしょうか?
メリットは幅広い保育スキルが身につく
認定こども園には、さまざまな年齢、さまざなま家庭環境を持った子どもたちが集まっています。「保育所だけ」「幼稚園だけ」の勤務では得られない、幅広い視野から子どもたちと係われるというのが最大のメリットです。
2017年に内閣府が発表したデータによれば、認定こども園の設置数は2011年:762園→2017年:5,081園と急激に増加しています。
既存の園が、認定を受けてこども園に移行するケースも増えてきました。勤務中の幼稚園が認定こども園に移行したとき、前もって両方の資格を取得していれば退職したり業務を縮小したりせず、お仕事を継続することができます。
認定こども園で働いた経験があれば、転職を検討する際にもより多くの選択肢が持てるでしょう。幼保一体化は今後ますます継続していくことが予想されます。保育教諭として経験を積むことは、将来きっと役に立つことでしょう。
保育教諭のデメリットは特になし
子どもの降園時間がバラバラなのでその点だけ注意が必要ですが、そのほか働く上でのデメリットというのは特にないようです。
しかし、保育士と幼稚園教諭いずれかの資格しか持っていない、取るつもりがなかったという方にとっては、両方の資格を取得するための時間や費用は若干かかるでしょう。
平成30年度の調査によると、幼保一体の考えが浸透しつつあるためか、現在では9割の方が両方の資格を保有しているようです。
出典:幼稚園教諭免許状・保育士資格の併有促進のための支援策について/内閣府
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保育教諭として働いてみませんか?
保育教諭の資格や給料、仕事内容などについて紹介しました。保育教諭とは保育士と幼稚園教諭を足したような存在です。保育教諭の最大の魅力は、保育と教育のどちらも経験することができるところではないでしょうか。
「保育所と幼稚園、本当は両方で働きたい」「幅広い年齢の子どもたちと関わりたい」と考える方にとっては、より学びの多い職場かもしれません。まだ認定こども園は今後はもっと増加していくことが予想されます。
この機会に、保育教諭という働き方について検討してみてはいかがでしょうか?