「業務量が多い」「人間関係が悪い」などの理由から保育士を辞めたいと考える方もいるかもしれません。保育士は子どもたちを見守り、育成する大切な仕事の一方で、体力的・精神的に限界を感じて退職を希望する方もいるようです。今回はなぜ保育士を辞めたいと感じるのか、その理由や対処方法、退職する際のポイントを詳しく紹介します。
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■目次
保育士の退職状況
保育士は未来を担う子どもの成長を支える大切な存在です。
しかし、近年は人材不足が深刻化しており、担い手が足りていない状況が続いています。保育現場で働き始めたものの、業務の辛さから早期退職を希望する方もいるようです。
なぜ、子どもたちが憧れる、将来なりたい職業のひとつである保育士が現場を離れてしまうのでしょうか。
まずは厚生労働省の「保育士の現状と主な取組」の資料において、保育士の退職理由や状況を見てみましょう。
保育士全体の3割が退職して他業種へ
2017年の調査によれば、保育士の退職理由の1位は「転職(保育業界)33.4%」、2位「結婚30.1%」3位「体調不良24.1%」という結果となりました。また、転職者のうち約半数が、保育業界に転職している一方、3割の方が他業種へ転身していることがわかりました。
保育業界に転職する方の多くは、保育士として働きながらも何らかの事情で他の園や施設に転職したことが考えられます。
一方、保育士資格を保有しつつ、現場を離れて他業種に転職してしまう方が3割いるため、保育業界自体を離れる方も少なくありません。
離職した方の約半数は経験年数8年未満
また、2016年の調査によれば、離職した保育士さんの約半数が「経験年数8年未満」という状況にあることもわかりました。
経験年数が浅い方が辞めてしまうことで、人材の育成が追いついていない現状もあるようです。
2年未満で辞める方が多いため、新人保育士さんが退職しないよう、働きやすい職場を作りあげることも保育業界における大きな課題のひとつでしょう。
また、仕事に対して、やりがいを感じる一方で保育士特有の悩みを抱いて現場を離れる方もいるようです。
次に保育士を辞めたい方はどのような理由で退職に至るのか、詳しく見てみましょう。
保育士を辞めたい理由:①仕事量の多さ
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保育士の仕事は、子どもの生活全般のサポートや遊びの指導、保育日誌や指導案といった書類作成、行事の企画・運営、保護者対応など多岐に渡ります。
保育中は子どもたちのお世話を中心に行い、その合い間に事務作業や連絡帳の記入、製作の準備などに取り組みます。
給食中は子どもたちの食事の援助もあることから、休憩時間が取れないまま、仕事をこなしている方も少なくありません。
常に膨大な仕事量に追われ、「この状況がずっと続くの?」「経験年数を重ねればさらに業務が増えそう」などといった不安を抱き、離職してしまう方もいるようです。
保育士を辞めたい理由:②待遇に不満がある
保育士という職種は以前から「給与が安い」「労働時間や残業が長い」などマイナスイメージを持つ方もいるかもしれません。
ここで、実際の保育士の平均給与を見てみましょう。
厚生労働省の2020年賃金構造基本統計調査によれば、常勤の保育士の現金給与額は「24.98万円」、年間賞与は「74.74万円」となります。
所得税や健康保険料などの社会保障を引けば、手取りは約20万円前後となるでしょう。子どもの命を預かる責任の重い仕事にもかかわらず、このような給与状況に不満を抱いて辞める方も多いかもしれません。
現状を打開しようと国は保育士のキャリアアップ制度を設け、月額5000円〜4万円の給与の増額に取り組んでいます。しかし、いまだに給与の昇給が行き届いていない保育士さんもいることから、転職の際はキャリアアップ制度の導入ついても、確認するとよいかもしれません。
保育士を辞めたい理由:③プライベートとの両立が難しい
保育士さんは業務中は保育活動が中心になるため、指導案やお便り、製作の準備などを自宅に持ち帰って行う方も多いでしょう。プライベートとの両立が難しく、休日も仕事に追われる場合もあるようです。
また、保護者へのクレーム対応や事務作業などで仕事がなかなか終わらず残業が続くことも考えられます。
休日に十分な休息が取れずに、体力や気力の限界を感じて辞めてしまう方もいるでしょう。
出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省
保育士を辞めたい理由:④人間関係が悪い
保育士は職員同士で協力して行う業務が多い仕事です。保育活動はもちろん、行事の企画や運営、保育室の衛生管理など、さまざまな業務を役割分担して行うことでしょう。
ただ、保育観が合わなかったり、連携ミスが起こったりすれば、関係が悪化して人間関係が悪くなる可能性もあります。特に担任、副担任とペアでクラス運営を行っている場合は、信頼関係が崩れると修復が難しい場合もあるようです。
その結果、人間関係のよい職場に転職したいと考えて退職を選ぶ方もいるかもしれません。
保育士を辞めたい理由:⑤体力的・精神的な悩みが多い
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保育士さんは、子どもを抱っこしたり、遊んだりと体力がいる職種のひとつでしょう。また、子どもや保護者、職員とコミュニケーションを図ることが求められる仕事になります。
体調を壊したり、良好な人間関係が築けなかったりすると、身体的・精神的に疲労を感じて辞めてしまう方もいるようです。
上記に記載した通り、体調不良を理由に多くの方が退職しています。保育士さん自身のケアについて、保育業界全体で取り組むことも大切になるでしょう。
保育士を辞めたい理由:⑥人材の育成が重荷
保育士の経験が3年以上になれば、人材の育成を任されることもあるでしょう。その際に、中堅保育士として先輩と新人の板挟みになることも考えられます。主任など責任ある役職に就けば、クレーム処理なども任され、精神的負担が大きくなるかもしれません。
自身のクラス運営の他に人材の教育担当を任される重責に耐えきれず、辞めてしまう方もいるようです。
保育士を辞めたい理由:⑦結婚・出産後の復帰が難しい
保育士さんの仕事量の多さやプライベートの両立の難しさを考えると、長期的な勤務が難しいと感じる方が多いようです。
結婚や出産を機会に現場を離れたのち、復帰を前向きに考えられないケースもあるでしょう。「体力が続く自信がない」「職員が不足しているから休みを取りづらそう」などさまざまな不安を感じて他業種を選ぶこともあるようです。
保育士を辞めたい!と感じたらどうする?3つの対処法
保育士という責任のある仕事にやりがいを感じる一方で、仕事量の多さや待遇への不満を抱いている方も少なくありません。
実際に保育士を辞めたいと感じた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、気持ちを整理する方法や転職の検討などもふくめ、3つの対処方法を紹介します。
①状況や気持ちを整理する
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退職を考えた場合、まず、「なぜ辞めたいのか」自身の気持ちを整理しましょう。
例えば、「保育観が合わない」「残業が多く休む暇がない」などといった園の保育方針や労働環境が根本的な原因の場合は、すぐに改善されることは難しいかもしれません。
しかし、「行事が忙しくて大変だった」など繁忙期が理由の場合は、「閑散期に有休を取得する」「体調不良を伝え、残業を減らしてもらう」など、園に相談することを考えてみましょう。
自身の状況を客観的に整理して、辞めるメリットやデメリットについても書き出してみるとよさそうです。
ただ、体調が優れずに業務をこなすことができないなど、体力的・精神的に追い込まれている場合は、自身の体を守ることを一番に考えて、退職を検討するとよいでしょう。
②年度途中の退職が可能か確認する
離職を考えている方の中には、年度途中に辞めたい保育士さんもいるでしょう。
一方で担任や副担任を持っている方は、子どもたちや保護者への影響を考えて年度途中の退職を避ける方も多いようです。
ただ、身体的な不調が続くなど、業務が続けられない状況の場合は辞めること前提に考えてみるとよいでしょう。
退職を申し出る期限については、各保育園の就業規則に示されています。法律上では「離職日の2週間前までに」と定められていますが、保育園によって「離職日の1カ月前までに」とルールを決めている可能性もあります。
園長先生に聞きづらい、就業規則の資料が見つからないなど、退職に関してのルールが確認しにくい場合もあるでしょう。
その際は、信頼できる先輩保育士さんなどに相談して、年度途中の退職を検討してみるとよさそうです。
③他に条件のいい施設への転職を検討する
退職を考え、違う保育園への転職を検討している方もいるでしょう。その場合は、自身の退職理由をふまえて、他に条件がよい転職先がないか確認するとよいかもしれません。
中には求職情報に「働きやすい!自由に休日の取得が可能」という記載があっても、実際の現場は「人間関係が悪い」「残業が多い」といった園もあるかもしれません。
よりよい環境に転職するためにも、地域の保育園情報に詳しい転職エージェントなどに相談してみるとよさそうです。
保育士を辞めたいときの退職の流れと注意点
保育園の退職を決めた場合、スムーズに離職するために準備することが大切です。ここでは、退職するまでの流れや注意点をまとめました。
①退職の意向を伝える
まずは直属の上司である主任やリーダーの方に退職の意向を伝えましょう。その後、園長や副園長に直接話す時間を設けてもらうとよさそうです。
いきなり退職届を用意するのではなく、まずは自身の思いをきちんと話しましょう。中には退職届を出す必要がない園もあるようです。
保育記録の引継ぎや保護者対応など時間がかかることが予想されるため、退職を決めたら早めに伝えることを意識するとよさそうです。
②退職届を提出する
退職届が必要な場合は、退職の希望日を記載して提出しましょう。一般的にパソコンで作成する方が多いようです。
文章の具体例は以下の通りです。
①冒頭:「退職届」と書きます。
②一行目:「私儀(わたくしぎ)」または「私事」と書きます。
③二行目:「このたびは一身上の都合により、〇〇〇〇年〇月〇日」をもって退職いたします。」
④三行目:〇〇〇〇年〇月〇日と退職希望日を記載します。
⑤四行目:行目下部に所属名と自分の名前を記載します。
⑥五行目:〇〇園 〇〇殿(代表者)
「私儀(わたくしぎ)」または「私事」というのは、「わたくしごとではありますが」という意味になります。
あらかじめ、用紙やペン、封筒を用意してスムーズに提出できるように準備しましょう。
②業務の引継ぎを行う
次に保育記録や指導案などを後任の方に業務の引継ぎを行います。子どもたちの発達状況・できることやチャレンジしていることなどをきちんと伝えましょう。
また、担任を担当し年度途中に退職する場合は、後任の方がクラス運営をスムーズに行うことができるよう、備品の位置や保育室の清掃方法など、細かな部分も説明することが大切です。
自分が現場を離れても、安心して担任をこなすことができるように配慮するとよさそうです。
③退職の挨拶をする
退職の際は、「子ども」「保護者」「周りの職員」「園長先生」などさまざまな方に対して、挨拶をすることでしょう。
退職当日までは業務の引継ぎや手続きなどで多忙になる可能性もあります。あらかじめ、どのような挨拶をするべきかしっかり考えておくとよいでしょう。
同時に私物や不用品の整理などをして、身の回りを整えることも大切です。スムーズに退職日を迎えられるよう、必要なことをピックアップして計画的に行えるとよいですね。
保育士を辞めたいときの対処法を考え、転職を検討しよう
保育士は子どもの成長を見守ることができる魅力的な職業ですが、労働環境への不満やクレーム対応の辛さなどが蓄積されると、他業種への転職を検討する方がいるかもしれません。
辞めたいと感じたときは、まず、自身がなぜ退職したいのか冷静に考えて、他の施設への転職を検討してみるとよいですね。
その際は保育士バンク!にご相談ください。
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