保育ソーシャルワークとは、悩みを抱えている子どもの保護者に対し、社会福祉の観点から相談・支援を行なう取り組みのことです。実際に相談・支援を担う人のことを「保育ソーシャルワーカー」と呼びます。今回は保育の現場で需要が高まっている保育ソーシャルワーカーの役割や求められる理由、寄せられる相談内容、なるための方法などを詳しく解説します。
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■目次
保育ソーシャルワークとは
保育ソーシャルワークとは、悩みを抱えている子どもの保護者に対し、社会福祉の観点から相談・支援を行なう取り組みのことです。
一連の相談・支援を担うのが「保育ソーシャルワーカー」であり、保育士や保護者と連携しながら、保育に関する相談や課題を解決することを目的としています。
保育ソーシャルワーカーの役割
保育園のような保育施設では、子どもの保護者から育児に関するさまざまな悩みが寄せられることも少なくありませんでした。
しかし、時代が進むにつれて子どもを取り巻く環境は複雑化・深刻化しています。そのため、保育施設だけでは対応しきれない状況も増えてくるようになったのです。
そこで悩みが深刻化する前に相談・支援を実施し、現場で働く保育ソーシャルワーカーが関係各所との連携を行なうこととなりました。
これにより、一般的な保育施設だけではカバーしきれない家庭の問題などを解決に導くことができるようになったのです。
保育ソーシャルワーカーが求められる理由
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保育ソーシャルワーカーが求められる理由としては、まず現代の子どもを取り巻く家庭環境が複雑化していることにあります。
その背景には、両親の離婚や経済的な養育の難しさなど、さまざまな悩みがあるようです。
保育ソーシャルワーカーは、こうした保育士が直接関わることのできない部分に対して、子どもや保護者に助言を行なっています。
また、児童福祉法が改正されたことで、保育園には地域子育て支援拠点事業を行なう役割が与えられるようになりました。
保育ソーシャルワーカーは保育園と地域を連結し、地域の子育て支援環境を整える役割を果たしています。
つまり、保育士ソーシャルワーカーはさまざまな問題の解決につながる存在であることはもちろんのこと、問題を抱えて悩んでいる保護者の助けとなるでしょう。
保育ソーシャルワーカーに寄せられる相談内容の一部を紹介
保育ソーシャルワーカーのもとには、保育士や保護者からさまざまな相談が寄せられます。たとえば、以下のような内容が多いようです。
- 子どもの言葉の学習速度や集団行動などの発達に関する相談
- 育児の進め方や通っている保育施設に関する相談
- 家庭の事情もしくは保護者自身の相談
このように、保育ソーシャルワーカーに寄せられる相談は比較的デリケートなものが多いです。そのため、保育ソーシャルワーカーとして働くには、福祉に関する専門知識やコミュニケーション能力など高いスキルが必要となるでしょう。
保育ソーシャルワーカーになるための方法は?
保育ソーシャルワークの取り組みを行なううえでは、保育ソーシャルワーカーという存在が欠かせません。
この仕事に就くには、日本保育ソーシャルワーク学会(JARCCSW)が実施する養成研修を受講する必要があります。
養成研修は初級・中級・上級の3段階です。初級および中級は養成研修を受講することで資格が認定される仕組みですが、上級は実務経験や学会での活動経験が必要となります。
2024年4月から「こども家庭ソーシャルワーカー」という資格が導入される
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2024年4月から新たに導入されるのが「こども家庭ソーシャルワーカー」という資格です。こども家庭福祉の現場において、専門的な知識を兼ね備えた民間資格となっています。
子ども家庭福祉分野では、子どもの虐待予防や親子分離を伴う保護といった介入的なソーシャルワークなどが必要とされており、専門的なスキルや知識が求められています。
児童相談所や児童養護施設などの施設では「児童福祉士」が対応しますが、全体の5割が勤続年数3年未満という状況のもと、人材の定着化・確保が大きな課題となっていました。
こども家庭ソーシャルワーカーの認定資格の設立によって人材を育て、人員の増員、長期的キャリア形成の後押しなどにつながることが期待されています。
以下の記事では、こども家庭ソーシャルワーカーの資格について詳しく解説していますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。
出典:「初級保育ソーシャルワーカー」及び「中級保育ソーシャルワーカー」 認定、登録に係る申請手続について/日本保育ソーシャルワーク学会
出典:こども家庭ソーシャルワーカー認定資格が創設されました/公益社団法人 日本社会福祉会
保育士資格を活かして保育ソーシャルワーカーを目指してみよう
保育ソーシャルワークとは、悩みを抱えている子どもの保護者に対し、社会福祉の観点から相談・支援を行なう取り組みです。
相談支援を担当する保育ソーシャルワーカーとして働けば、保育士として働いていたときに対応できなかった問題にも対処できるようになるため、やりがいのある仕事といえるでしょう。
保育ソーシャルワーカーは養成研修を受講することで、資格が取得できます。初級・中級・上級の3つの等級がありますが、初級であれば誰でも受講可能などで取得しやすいでしょう。
保育士として働いた経験を活かせる仕事のひとつでもあるので、興味がある方はぜひ保育ソーシャルワーカーを目指してみてはいかがでしょうか。