国家試験の一つである保育士試験は、一般的に合格率が低く難易度が高いと言われています。実際どのくらい難しいのか、また独学でも合格できるのかなど知りたい方もいるでしょう。今回は、厚生労働省の資料をもとに保育士試験の合格率や過去の推移などを紹介します。あわせて、試験合格に向けた勉強方法もまとめました。

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保育士試験の概要
1年に2回、春と秋に実施される保育士試験。
2022年は前期日程が4月~7月、後期日程が10月~12月で予定されています。
合格率や難易度を見ていく前に、まずは保育士試験の科目について簡単におさらいしましょう。
一次試験(筆記試験)
筆記試験の科目は全部で9つあります。筆記試験の出題科目と、科目別の内容を以下にまとめました。
教科 | 内容 |
---|---|
1.保育原理 |
・保育に関する法令及び制度 ・保育所保育指針における保育の基本 ・保育の思想と歴史的変遷 ・保育の現状と課題 |
2.教育原理 |
・教育の思想と歴史的変遷 ・教育の制度 ・教育の実践 ・生涯学習社会における教育の現状と課題 |
3.社会的養護 |
・社会的養護の基本 ・社会的養護の制度と実施体系 ・社会的養護の対象・形態・専門職 ・社会的養護の現状と課題 |
4.子ども家庭福祉 |
・子どもの人権擁護 ・子ども家庭福祉の制度と実施体系 ・子ども家庭福祉の現状と課題 ・子ども家庭福祉の動向と展望 |
5.社会福祉 |
・社会福祉の制度と実施体系 ・社会福祉における相談援助 ・社会福祉における利用者の保護に関わる仕組み ・社会福祉の動向と課題 |
6.保育の心理学 |
・子どもの発達過程 ・子どもの学びと保育 |
7.子どもの保健 |
・子どもの身体的発育・発達と保健 ・子どもの心身の健康状態とその把握 ・子どもの疾病の予防及び適切な対応 |
8.子どもの食と栄養 |
・栄養に関する基本的知識 ・子どもの発育・発達と食生活 ・食育の基本と内容 ・家庭や児童福祉施設における食事と栄養 ・特別な配慮を要する子どもの食と栄養 |
9.保育実習理論 |
(音楽や言語、絵画、絵本など) |
筆記試験はマークシート形式で、1科目につき10~20問の設問が用意されています。
100点満点のうち60点(6割)以上得点すると合格ですが、「教育原理および社会的養護」は各分野50点満点で設定されており、それぞれ30点以上得点すれば合格です。
また、一度合格した科目は3年間再受験が免除されます。
二次試験(実技試験)
筆記試験の科目にすべて合格すれば、二次試験を受験できます。
実技試験は、「音楽表現」「造形表現」「言語表現」の3つのうち2分野を選択します。
二次試験の科目別の出題内容、求められる力は以下の通りです。
出題科目 | 出題内容 | 求められる力 |
---|---|---|
音楽表現に関する技術 | 幼児に歌って聞かせることを想定して、課題曲(2曲)の両方を弾き歌いする。 | 保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること |
造形表現に関する技術 | 保育の一場面を絵画で表現する。 | 保育士として必要な造形表現(情景及び人物等を豊かにイメージした描写や色づかいなど) ができること。 |
言語表現に関する技術 | 3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、4つのお話のうち一つを選択し、 子どもが集中して聴けるようなお話を行う。 | 保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方が できること。 |
1分野につき50点満点中30点以上得点し、2分野で合計60点以上得点すれば合格です。
筆記試験、実技試験ともに合格すると保育士試験合格となり、保育士資格を取得できるようになります。
保育士試験の合格率と過去の推移

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保育士試験の科目をおさらいしたところで、ここからは合格率や過去の推移を見ていきましょう。
保育士試験の科目別合格率
厚生労働省の「保育士試験の実施状況(令和2年度)」によると、2020年の保育士試験の全体の合格率は約24%です。
筆記試験(一次試験)
厚生労働省の「保育士試験の実施状況(平成27年度)」によると、2015年の筆記試験の合格率は25.2%と説明されています。
過去の筆記試験の合格率の推移と比較しても大きな差はないため、例年20%前後が筆記試験の合格率の目安と言えるでしょう。
実技試験(二次試験)
同資料によると、2015年の実技試験の合格率は89.1%です。
過去の推移を見ても例年80%を超えており、筆記試験よりも合格率が高いため難易度は低いと言えるでしょう。
保育士試験の合格率の推移
厚生労働省の資料をもとに、2008年~2018年までの受験者・合格者・合格率を以下の表にまとめました。
受験者 | 合格者 | 合格率 | |
---|---|---|---|
2008年 | 37,774 | 3,989 | 10.6% |
2009年 | 41,163 | 5,240 | 12.6% |
2010年 | 46,820 | 5,324 | 11.4% |
2011年 | 49,307 | 6,957 | 14.1% |
2012年 | 52,257 | 9,726 | 18.6% |
2013年 | 51,055 | 8,905 | 17.4% |
2014年 | 51,257 | 9,894 | 19.3% |
2015年 | 46,487 | 12,962 | 22.6% |
2016年 | 70,710 | 18,229 | 25.8% |
2017年 | 62,555 | 13,511 | 21.6% |
2018年 | 68,388 | 13,500 | 19.7% |
過去の推移を見てみると、受験者数は約2倍、合格者数は約3倍になっています。
また、それに伴って全体の合格率も10%台から20%台へとアップし、2015年頃から20%前後をキープしていることがわかります。
保育士試験の合格率は低い?

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保育士試験の難易度をふまえ、他の国家試験との比較や合格率が低い理由を見ていきましょう。
他の国家試験との比較
先述したように、保育士試験の合格率は例年約20%程度で推移しています。
一方、同じ医療・福祉分野における国家資格である薬剤師や看護師試験の合格率は、保育士試験ほど低くないようです。
2020年の保育士試験と薬剤師国家試験、看護師国家試験の合格率をそれぞれ以下にまとめました。
保育士試験 | 薬剤師国家試験 | 看護師国家試験 |
---|---|---|
24.24% | 69.58% | 89.20% |
この表から、保育士試験は他の2つよりも大幅に合格率が低いことがわかります。
さまざまな要因が考えられますが、薬剤師や看護師国家試験の場合、大学や専門学校で勉強した学生さん・卒業生の人数が、全体の受験者数に占める割合が多いことが関係しているかもしれません。
一方保育士試験は、基本的に保育関係の大学や学部、学科などを卒業していない方が受験するため、受験者数に対する合格者数が少ない傾向にあることが考えられるでしょう。
合格率が低い理由
全体として合格率が低く、かつ実技に比べて筆記の難易度が高い保育士試験ですが、合格率が低い理由としては以下が挙げられます。
- 筆記試験は科目数が9科目と多い
- 試験範囲が広い
- すべての科目で6割以上得点しないと合格できない
特に、筆記試験の合格率は9科目すべてに合格した人の割合を示しています。
そのため、数科目のみ合格し次回も試験を受ける方は合格者として含まれないことも、合格率が低い原因の一つとして考えられるかもしれません。
一方で実技試験の合格率が高い理由として、自分の得意分野を選んで受験できることや、一次試験の結果発表から二次試験までの約2カ月をかけて、集中的に対策できることなどが挙げられそうですね。
出典:第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験及び第109回看護師国家試験の合格発表/厚生労働省
保育士試験に合格するための勉強方法と対策

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保育士試験の合格率や難易度をふまえたうえで、合格に向けた勉強方法を紹介します。
通学講座を利用する
民間企業が提供する保育士試験対策の通学講座を利用する方法があります。
対面での講義はもちろん、収録済みの講義をDVDで視聴できたり、eラーニングを利用できたりする場合もあるようです。
直前対策や実技試験対策など短期集中型の講座もあるため、苦手な分野を重点的に勉強することもできるでしょう。
講義内容も幅広く、直接講師からフィードバックをもらえるため、基礎からしっかり学びたい方や実技科目に不安を感じる方などに向いているかもしれません。
通学でありながらも、講義を受けやすいように授業スタイルを工夫している講座が多いので、モチベーションを保ちながら勉強を進められそうですね。
通信講座を利用する
保育士試験対策用の通信講座を利用して勉強する方法もあります。
送付される教材をもとに勉強をして課題を提出し、チェックしてもらうスタイルが一般的です。
定期的に課題を添削してもらえるので、自分の弱点や間違いを見直すことができるでしょう。
また、DVDやWEB学習などに対応しているサービスもあるので、筆記だけでなく実技試験の対策までカバーされていることが多いようです。
受講期間は約半年から1年程度で設定されている場合が多く、比較的ゆっくりとしたペースで勉強できるため、着実に知識を積み重ねられそうですね。
独学で勉強する
講座などを利用せずに独学でチャレンジする方法もあります。
筆記試験は自身で購入したテキストや問題集を利用し、実技は教室やレッスンに通ったり動画を有効活用したりして対策するスタイルです。
基本的なコストは市販のテキスト代とレッスン料のみなので、通学講座や通信講座を利用するよりも資格取得にかかる費用を安く抑えられるでしょう。
ただし、自分で学習計画を立てて進めなければならないため、モチベーションを維持するための工夫が必要です。
また常にアンテナを張って、保育に関する法改正などの最新情報を把握するよう心がけることも大切ですね。
合格率や難易度をふまえ、保育士試験に向けて対策しよう
今回は、保育士試験の合格率や難易度が高いと言われる理由、過去の推移などを紹介しました。
保育士試験は筆記と実技の2つから構成されており、筆記試験の9科目すべてに合格しなければ実技試験を受けることができません。
また、筆記試験は科目別に6割以上の合格ラインが定められており、すべて満たさなければ合格とはならないため、全体の合格率が低くなっていると考えられます。
2016年より1年に2回の実施となり挑戦できるチャンスは増えたものの、依然として他の国家試験と比べると難易度は高いようです。
保育士試験に向けた勉強法には、主に通学・通信・独学の3つがあります。それぞれの特徴をふまえたうえで、自分に合ったやり方で保育士試験の合格を目指してくださいね。
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