保育の現場においてペープサートはよく使われる保育教材のひとつです。次の活動へ移る導入のタイミングや、すきま時間の保育など、さっとすぐに始められて子どもたちの興味を引きつけるのにぴったりでしょう。このコラムでは、ペープサートとはどんなものなのか、そのねらいや、題材の選び方、演じ方のポイントなどを紹介します。
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ペープサートとはどんなもの?
ペープサートとは、紙の人形劇のこと。画用紙と割りばしなどを使って簡単に手作りすることができます。紙人形劇を表す英語の「paper puppet theatre」が簡略化した造語といわれています。
ペープサートを使うねらい
ペープサートを保育の現場に使うことにはたくさんのメリットがあります。
子どもの興味を引く
まず第一に、子どもたちの興味を引くことができる、というところにペープサートを使うねらいがあります。特に、日常の保育で次の活動に移りたいときなど使うことができるでしょう。
前の遊びが楽しいときなど、子どもたちはなかなか次の活動に気持ちを切り替えられないことも多いかもしれません。そういったタイミングでペープサートが出てくると、子どもたちも動く紙の人形やストーリーが気になって集中してくれます。
それを利用すると、次の活動に移行するのがよりスムーズになるでしょう。
話の理解がしやすくなる
絵本や紙芝居などと異なり、ペープサートは子どもたちの話の理解度を上げられるよさがあります。
絵本や紙芝居では既にある絵を見せながらお話を読んでいきますが、ペープサートは登場人物が紙人形となって動くので、動きのあるストーリー展開が持ち味です。
子どもたちも動くものに興味を示しやすいので、飽きずにストーリーに没頭できそうです。
子どもの想像力・表現力を育てる
ペープサートは紙人形がメイン。事前に準備した場合は、舞台を用意することもありますが、導入など即興でやった場合は特に、絵本のような背景がありません。
そのため、子どもたちは背景を想像しながらお話を楽しみます。子どもたちの想像力を育てるきっかけになるかもしれません。
また、ペープサートの作り方は簡単なので、子どもたちも作ることができます。先生から子どもたちへ見せる人形劇だけではなく、子ども同士や、子どもたちから先生へ見せるのもよさそうですね。
ペープサートを使う場面
ペープサートはどのようなタイミングでも取り入れることができますが、特に前の活動から次の活動へ移るタイミングや、子どもたちがなかなかまとまらないとき、集中してほしいときに使うのがよいでしょう。
また通常の人形劇ではなく、シルエットクイズとして利用することもできるので、汎用性があります。
ペープサートの作り方
ペープサートの基本的な作り方の流れを紹介します。
物語の題材の選び方
まずは、ペープサートの劇にする題材を選びましょう。ペープサートに使う物語は、基本的には何を取り上げてもよいようですが、物語によって向き不向きがあります。以下のポイントを意識して題材を選んでみましょう。
・話がシンプル
・表情や動きなどの変化が大きい
まず一つに、登場人物が少ないことが第一です。ペープサートは手に紙人形を持って演じるため、登場人物が多いと手で持てなくなってしまいます。登場人物の少なさにも通じますが、話がシンプルであることも重要です。
基本的に劇中では登場キャラクター同士の会話でストーリーを進めていくので、ナレーターがいらないことや、時間や場所の移動などが少なくシンプルなものが、子どもたちにわかりやすくてよいでしょう。人形の表情やセリフ、動きが大きくできるものだと、より話におもしろみが出て子どもの注目を引くことができるかもしれません。
これらのポイントに気をつけて、絵本や昔話、教材から題材を選んでみましょう。自作のオリジナルストーリーを考えてみるのもよいかもしれませんね。
材料を用意する
題材が決まったら、ペープサートを作るための材料を用意しましょう。基本的な材料は以下です。
・割りばし
・テープ/のり
この3つだけ用意すれば、ペープサートはすぐに作ることができます。絵は自分で描くことはもちろんのこと、イラスト集や保育教材をコピーして切り貼りして作ることもできるので、時間や手間を省くことができます。
基本のペープサートの作り方
ペープサートの作り方はとても簡単です。絵が描いてある画用紙をうちわ状に2枚カットし、割りばしを中にはさんでテープで固定すれば完成です。
このとき、テープを輪のようにして両面テープを作り、画用紙の内側に貼ると表にテープが見えなくてきれいでしょう。のりを内側のフチに塗るとよりしっかりした作りになります。
ペープサートの演じ方のコツ
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ペープサートの演じ方にはコツがあります。以下のコツを意識すると、より子どもたちがペープサート劇を楽しんでくれるでしょう。
絵をひっくり返す
ペープサートの棒には表裏に絵を貼ることができますよね。それを利用して、登場人物の表情の変化を表現したり、体の向きを変えたりする演出ができます。指先でくるっと素早く回すのがポイントです。
トコトコ走り
登場する人物が移動するときに、ペープサートを少し左右に傾けながら移動させる方法です。シンプルに横移動をするよりも、傾けることで動きをつけると歩いたり走ったりしている様子を表現できます。
こんにちはのおじぎ
登場人物同士が出会って「こんにちは」とあいさつするとき、言葉だけではなく、2つの人形を軽くおじぎさせてあげるとよいでしょう。その際、「こんにち」で人形を傾け、「は」のタイミングでさっと起こすとテンポがよいです。
話すときに動かす
登場キャラクターが話しているとき、小さく人形を動かすことで、今誰が話しているかがわかりやすくなります。反対に、聞いている側の人形を「うんうん」とうなずくタイミングで小さく傾けるのも、会話をしている雰囲気が出せます。
登場人物によって声色を変える
登場するキャラクターによって声色を変えることで、物語の楽しさが増し、子どもたちがお話に引き込まれやすくなるでしょう。誰のセリフなのかもわかりやすくなりますね。
注目させたいときは間を持たせる
重要な展開やオチの場面では、セリフや人形の動きに間を持たせることで注目を集められます。キャラクターが話すときにタメを作ったりすると、子どもたちも「何だろう?」と気になるかもしれません。
ペープサートを上手に保育に取り入れよう
絵本や劇などとは異なる魅力を持つペープサート。登場人物が動くことで臨場感が味わえ、背景の情報が少ない分、子どもたちの想像力をくすぐるのが大きな魅力です。
また準備が簡単で、導入時に取り入れやすい点も、保育士にとってペープサートの意義は大きいと言えます。実習や日常保育に取り入れ、スムーズな保育に役立てたいですね。