ここでは、保育士資格の解説や、取得するための方法を紹介します。進路として保育士を考えている中学生や高校生の方には、専門学校・短大・大学に進学する方法を、主婦や一般企業で働いている社会人の方に対して、実務経験がなくても保育士になれる方法を解説していきます。
ucchie79/shutterstock.com
「保育士」になるには?
保育士の仕事はとてもやりがいのあるものです。子どものそばで成長を見守り、一時の親代わりとして時間を共にする。乳幼児期は、子どもが身体的にも精神的にも、社会的にも大きく成長する時期。
そんな時期に、子どもの育ちを間近で見ることができるのは、保育士だけの特権だと言えるでしょう。では、保育士になるためにはどうしたらいいのでしょうか。
保育士資格について
まずは保育士として働くために必要な「保育士資格」について、資格を取得するためには何をすればいいのかを解説します。
そもそも保育士資格とは?
保育士の資格は児童福祉法で定められた、国が認定する「国家資格」です。誰でも保育ができるわけではなく、保育の専門的な知識と技能があると国が認めた方のみが保育士として働くことができるようになっています。
その保育士には、法律で定められた条件を満たす人しかなれません。具体的には、保育士資格を取得できる学校を卒業するか、保育士資格試験に合格するかのどちらかです。
保育士資格を持っていると、保育所だけでなく、助産施設や児童養護施設などの「児童福祉施設」で働くこともできます。
「なりかた」その1…保育系の学校を卒業する
保育士になる方法の一つは、専門学校・短期大学・4年制大学で、保育士になる養成課程の学科を卒業することです。これらの学校では、保育士としての専門知識、ピアノや読み聞かせなどの実技の授業、保育実習を必修にしています。
保育士に必要な能力を学校に通っている間に身に着けることができるため、卒業と同時に保育士資格が取得できます。
「なりかた」その2…保育士資格試験に合格する
もう一つの保育士になるための方法は、保育士資格試験に合格することです。試験は筆記試験と実技試験の二部に分かれており、筆記試験では「保育原理」や「保育の心理学」など保育の専門知識8科目のテストがあります。
実技試験は、音楽、造形表現、読み聞かせの中から2科目を選んで試験官の前で披露します。例年、合格者は受験者の2~3割程度で、難易度は高めです。
この試験には受験資格があり、専門・短大・4大卒の学歴が必要です。高卒・中卒の方でも児童福祉施設で一定の時間働けば受験できます。
現役中学生・高校生へのアドバイス
中学校の家庭科授業では、職場見学として、学校近隣の保育園を訪れる人もいます。そこで子どもと関わるお仕事のやりがいを見つけ、保育士を目指す中学生もいることでしょう。
また、子どもが好きで将来は保育士として働きたいと具体的に考えている高校生もいるかもしれません。そのような中学生、高校生が保育士になるために何をしたらいいのか考えてみました。
保育科のある高校や大学、専門学校への進学
中学生から保育士を目指す場合
中学生で保育士になる強い意志を持っている方は、保育科のある高校への進学を考えてみるのもよいかもしれません。保育科の高校というのは、あくまで保育士となる準備として有用な選択授業がある普通高校、といったイメージです。
卒業と同時に保育士資格が取得できるわけではありませんが、高校の保育科に入学するメリットはたくさんあります。
保育科の学校にはピアノや造形表現、読み聞かせなどの実技の授業があるため、大学、専門学校に進学した際に実技の授業で苦労することが少ないでしょう。
また、大学への進学で系列大学や指定校による推薦枠を多く持っており、進学の際に他の受験生より有利になる場合があるのでります。将来の夢が明確な生徒さんにとって、保育科のある高校は保育士になる近道となります。
高校生から保育士を目指す場合
高校生の方は保育系の専門学校・短大・4年制大学への進学という選択肢があります。こうした学校では、専門知識や実技、実習も全部まとめて面倒を見てくれます。卒業と同時に資格取得ができるために、保育士になる確実な方法といえるでしょう。
2年制の短大・専門学校を選んで最短での資格取得を目指すのか、4年制の大学で長く広く学ぶのかも考えるべき点です。専門学校でも3年間をかけて、さらに専門的な知識を学ぶ特別課程もあるので幅広く選択肢をチェックしてみてくださいね。
将来の進学に向けてしっかり勉強を
Wayne0216/shutterstock.com
将来の職業の選択肢の一つとして、保育士を考えている方は、まずは目の前の勉強をしっかりこなすことが大切です。
先述したように、保育士になるには保育の学校を卒業するか、保育士試験を合格するという二つの方法がありますが、保育の専門学校に入るためには受験が必要です。
学歴についても、将来に保育士試験を受けようと考えた時に、短大や大卒であれば、すぐに試験を受けることができます。
進学の場合でも、専門学校や短大はAO入試、一般入試でも面接や作文がメインの学校が多いので、保育士になりたいという熱い気持ちや、将来へのビジョンがしっかりしていることが必要です。
大学や短期大学の一般入試だと、教養としての科目試験がある場合もあります。その場合は日ごろの勉強も頑張らなくてはなりません。
まずは、自分のやりたいことを追求する
「保育士には興味はあるものの、将来のことはまだわからない」という方は、ひとまずは、興味のある一般の学校や、就職を考えてみるというのも一つの選択肢です。資格は保育士試験に合格すれば取得できます。独学での勉強も、通信講座を受講すれば、安くて時間に合わせた勉強ができます。
学生の間でも、卒業後一般企業に就職しても、「保育士になりたい」と思ったら保育士になることはできます。自分探しのために、興味のある分野の学校に進学しても、保育士になる可能性は消えません。
また、違う勉強をしてもその経験は無駄にはなりません。例えば、英語を大学で学んだという場合なら、英会話力を活かして、英語教育に取り組む保育園への就職ができます。
高卒で就職しても、パートで保育補助として働ける保育所はあります。保育所で働いてみて、そのまま保育士として働きたいと思えば、保育士試験の受験資格を取るまで働き、試験勉強するという道もあります。
まずは、自分のやりたいことを追求してみてはいかがでしょうか。
主婦・社会人へのアドバイス
「いまは主婦や社会人で、保育士資格を持っていないけど、保育士に興味がある」という方は、どのように保育士を目指せばいいのでしょうか。
保育士試験に合格する
社会人として働きながらでも保育士を目指すことは可能です。保育士試験に合格するために、独学で勉強して試験合格を目指しましょう。
保育士試験は、1回の受験ですべての科目に受かる必要はありません。科目合格の制度があって、一度合格した科目は3年間の間再受験しなくてもいいのです。
2016年から試験も年2回に増えたため、チャンスは多く、日々勤務や家事、育児に忙しい中でも、自分のペースで保育士になれるでしょう。
独学のメリットの1つはその費用の安さです。参考書数冊、通信教育講座にかかる費用は2年以上通わなければならない大学の授業料に比べると大きな差があるでしょう。
また、通学や実習もないため仕事をしながら、家事をしながらの隙間時間で勉強することができるのもメリットです。
一方で、働きながら自身で勉強のペースをつくるのは人によっては大きな苦労となるかもしれません。
保育系の学校に通いなおす
保育系の学校に通いなおすという選択肢もあります。通いなおすといってもさまざまな方法があります。
通信制の学部・夜間学部に通う
働きながら学ぶことができるのが、通信制の大学や夜間学部です。就学期間は3年と昼間の課程よりも長くかかってしまいますが、勤務の終わる時間帯に合わせて授業を受けられるため、働きながら勉強をしたい方向けの資格取得方法です。
ただし、一定期間の実習や通信課程だとスクーリングといって学校に通学しなければならない場合があります。
こうした期間は仕事に出られない場合もあるので、時間に融通の利く職業の方や夜間や隙間時間を見つけて学びたい主婦の方向けの資格取得の方法といえます。
昼間学部に通う
仕事を辞めて一般の学部に通うのも保育士になるための手段の一つです。とはいえ、仕事を辞めるというのは学費や生活費の問題を考えてみても難しいもの。
そうした場合には、都道府県や市区町村の設ける奨学金や職業訓練制度を利用してみてはいかがでしょうか。都道府県や市区町村のなかには、保育士を目指して学ぶ学生向けに授業料の半額程度を目安に補助をしてくれる場合があります。
また、こうした奨学金のなかには、卒業後自治体内の保育施設で一定期間働くことで返済が免除されることもあります。こうした制度を利用して保育士を目指してみてはいかがでしょうか。
保育士になる夢は誰でもつかめる!
保育士になる方法は、学校に通うか保育士試験に合格するかの二つしかありません。しかし、それだけ保育士になる方法はシンプルだということがいえます。
保育士になろうと考えている若い学生の方は、保育系の学校に進学することで資格取得はできます。もし保育士ではなく、別の分野の勉強をしたり、保育業界以外の職場で働くことになったとしても、「保育士になりたい」と思い立った瞬間から勉強を始めて合格すれば保育士になれます。
主婦の方、社会人として働いている方も、遅すぎるということはありません。忙しい中でも独学で勉強できる通信教育はたくさんありますし、奨学金も利用できます。
中卒・高卒で受験がないとしても、保育補助として働ければ、やがて受験できます。こうして見ると保育士になるための門戸は、広く誰にも開かれていることがわかります。
「保育士になりたい」という強い気持ちさえあれば、誰にでもなれる職業、それが保育士なのです。